こんにちは、吹奏楽.comです。
管楽器を演奏する上で、テクニック上もっとも大切なのは「ブレス・コントロール」だというお話をしましたが、テクニックの次は「表現」の面でのお話です。
音楽を表現する上でもっとも大切なのは「歌う」ことです。
「うたう」という言葉の漢字を調べると、
「歌う」
「唄う」
「謳う」
「謡う」
「唱う」
他にも「うた」だと、
「詩」
「吟」
「譜」
「哥」
など、まだまだたくさん出てきます。
一般的な声に出してメロディを歌うこと以外にも、日本語ではいろんな意味で「うた」という言葉が使われることがわかります。

楽器を演奏するときに、
「もっと歌って」
と言われることがあると思います。
表情豊かに、感情を込めて、気持ちを入れて
というような意味であることは、誰でもなんとなくわかると思います。
どちらかと言うと旋律的なフレーズを演奏する場合に言われることが多いと思います。
ですが旋律(メロディ)を演奏する時だけではなく、演奏するすべての音を「歌って」ほしいと思います。
メロディ以外の、単に伸ばす音や、刻む音、単純な動きなどの時もです。

古今東西、どの楽器がナンバーワンか、などという企画があったとしたら馬鹿馬鹿しいことだと思われるかもしれませんが、あえて世の中で一番の楽器を選ぶとしたら「声」になります。
人間の声よりも優れた楽器はない、と言って間違いないと思います。
それだけ人の心にストレートに訴えかけてきますし、また歌には「歌詞」をのっけることもできます。
ズルイですよね。
管楽器や打楽器、弦楽器の演奏に「歌詞」をのっけることはできません。
ピアノやギターだって同じです。
人類が誕生してから今まで、歌のない時代や歌のない地域は、おそらくなかったのではないかと思います。
人にとって歌は根源的なものだと言えるでしょう。
楽器は、どの時代でも、どこの国でも、「歌」を目指して作られ改良されてきました。
結果的に楽器でしかできない表現なども後に生まれて、歌の方が逆にそちらを真似るような部分も少しありますが(歌の中の「トリル」などはそれに当たると思います)、やはりどの楽器も「歌」というものには総合的にはかないません。

単純な伸ばす音や、刻む音などでも、「歌って」演奏することで、まったく違った、生き生きとした音楽になります。
素晴らしい打楽器奏者が演奏するバスドラム(大太鼓)の刻みに、「歌」が感じられて感動したことがあります。
偉大なピアニストのグレン・グールドは、いつも実際に声に出して「歌いながら」演奏していたので、残された録音にも常に本人の声が一緒に入っているのをうっすらと聴くことができます。
優れた演奏家は、たいてい好きな「歌手」がいます。
自分と同じ楽器の名演奏家の他に、歌手が大好きでその歌手に近づきたいと思って演奏していることがよくあります。
オペラハウスの楽団員は、今まで受けたどんなレッスンよりも、優れた歌手の演奏を間近で聴けたことが、一番自分の為になったと口々に言います。
「歌って」演奏することを心がけていると、自然とヴィブラートがかかることがあると思います。
とても良いことだと思います。
「変だからやめよう」
などと思わずに、どんどんヴィブラートをかけて演奏してください。
楽器によっては、ヴィブラートをかけるのがあまり一般的ではないものもあります。
クラリネットやホルンなどは、地域やスタイルにもよりますが、あまりヴィブラートをかけることがない楽器です。
でも歌って演奏することで結果的に少しヴィブラートがかかったとしても誰も文句を言わないと思いますし、きっとその時は良い演奏ができていると思います。

上手に演奏しようとすると、どうしても「正確に」「ミスなく」演奏することを心がけますので、場合によっては「歌」が感じれらない、悪い意味で機械的な演奏になることがあります。
ただ音が並べられただけのような演奏は、たとえ正確でミスがなかったとしても人の心に届かないと思います。
歌うことはツライことではありませんので、心配しなくても大丈夫です。
「歌う」ことは気持ちのいいことです。
カラオケは日本が発祥のもののようですが、単なる一過性のブームで終わらず世界的に定着しています。
誰しも「歌いたい」と言う気持ちがあるからだと思います。
気分がいい時に鼻歌を歌う人はたくさんいます。

常に「歌心」を持って演奏していれば、人の心に届きますし楽器も上達すると思います。
みなさんの日々の生活が、音楽で豊かになりますように。
